通訳ガイド奮闘記

外国語で観光案内を行うプロの観光ガイド「通訳案内士」。語学力だけでなく、日本の歴史や文化といった幅広い知識、教養を持って日本を紹介するお仕事です。

 

東さんガイドs

ツアーのお客様と東さん(左奥) [みなさん好奇心が強くて、たくさん質問をしてくれます」と東さん。

東 禎子

 ガイドの仕事を始めて6年経ちます。資格を取れば自動的に仕事が入ってくるものと思っていましたが、すぐに、それは長い道のりの出発点に立ったに過ぎないということが分かりました。エージェントとの繋がりを作ることに関しても、ガイドとしての知識を身につけるということに関しても・・・。

ガイドとしての知識は、観光地の歴史や情報の他に、日本の社会や日本人の生活全般などを含みます。日本の習慣、伝統芸能、教育制度、政治、経済、医療制度などなど。気が遠くなりますが、少しずつ知識を増やしていって、お客様に何を聞かれても何かしらの答えを出せるように、引き出しは出来るだけ多く用意します。何か聞かれて答えを持ち合わせていない時も”I don’t know.”(知りません) とは言わないのが鉄則とされています。「色々な解釈がありますが、以前私がどこかで読んだ話では・・」とか、「年代によっても違うのではっきりとは言えませんが・・・」などと曖昧にしながらもお客様がある程度納得する返答をするよう心がけます。日本に来るお客様は、日本に興味を持っているから来て下さっているので、特に高いガイド料を払って私達ガイドを雇って下さるお客様に対しては、その知的好奇心を存分に満たしてあげられるよう努めます。そして何より、お客様に日本での旅行をとにかく楽しんでもらうよう心がけ、そのためには自分もお客様との時間を存分に楽しもうという姿勢がとても大事になってきます。

今までで困らされたお客様といえば、京都の二条城で、写真やビデオ撮影が禁止なのに、こっそり私や係員の目を盗んで何度も撮ろうとした人や(あまりにひどい場合は旅行会社に直接クレームが届き、旅行会社が始末書を提出する羽目になったり、その施設にはしばらく出入り禁止になったりするそうです)、高野山の宿坊で、入浴時間が決まっているのに、朝シャワーをしたいといって聞かず、「ここはホテルじゃないからダメ」ときっぱり伝えましたが、結局いつもお世話になっている馴染みの宿坊で、融通してくださったり・・(実はどちらも同じ国のお客様です)。

ツアーの形態は、大きく分けて、団体とプライベートがありますが、団体はバスの移動中ほぼ一方的にしゃべり続け、目的地に着いても要所要所でうまくまとめて話さないといけません。いちいち大人数をまとめてからしゃべるので、後で「あー、この説明もしようと思ってたのに言ってなかった」ということが時々起こります。プライベートのお客様はずっとお客様の横でしゃべり続けることが出来るので言い忘れた事があってもすぐにその場で付け足せたり、質問などにはすぐ答えてあげることができ、またお客様のペースに合わせてある程度流動的に進められるメリットがあります。ただ、団体のいいところは「今から自由時間で、?時にバスに戻って下さい」と言ったらその間ガイドは一息つけますが、プライベートだと、結局ずっとつきっきりになるので、そのような息抜きの時間はありません。最初は断然プライベートのお客様を扱うことが多く、形態としても団体よりも好きでしたが、最近は徐々に、団体のバスもするようになりました。人数が多いと大変なことも多いですが、バスでより長い日数をお客様と共に過ごし、終わった後の達成感が味わえる団体の魅力も感じるようになりました。

通訳案内士(ガイド)になるには?

国家試験「通訳案内士試験」に合格して、都道府県知事の登録を受ける必要があります。試験は年齢、性別、学歴、国籍などに関係なく受験が可能です。2013年4月1日現在の登録者数は16,779人です。